2021年6月29日火曜日

炭酸の飲み物作り今昔

【そのむかしの炭酸飲み物】

小学生頃の夏だったと思う。父がクエン酸を一瓶買ってきてくれた。というのも、当時定期的に届けてもらっていた雑紙『科学』(学研刊)に、飲み物の作り方が付録つきで載っていて、私はそれがとてもとても美味しいのだと報告していたのだ。

その飲み物の作り方はこうだ。クエン酸と炭酸ナトリウム、それに砂糖をまぜて水を入れればシュワシュワあぶくの美味しい飲み物ができるというわけ。


だが、付録はそのクエン酸と炭酸ナトリウムが小さな袋に入ってるだけ。数回であっというまになくなってしまうんである。

もっともっと作ってみたいのだが、炭酸ナトリウムはあるのに、クエン酸というものがない。炭酸ナトリウムは家にあるのになあ。あ、炭酸ナトリウムは台所の常備品だった。強烈にすっぱい当時の夏ミカンに振りかけていくぶんすっぱさを和らげ(たような気がし)て無理矢理食べるときの必需品であり、またホットケーキもどき(地元では“なべやき”と呼んでる)を作るときのふくらし粉として活躍する馴染みの品である。

さて欲しいのは、クエン酸。お店で売ってるのを見たこともない。いったいどんなものなんだろう?クエン酸に恋して悶々とする日々。

その窮状を察してか、父からのクエン酸一瓶ドーンのプレゼントだったのである。しかも、父はさらに私専用の炭酸ナトリウムの500グラム入りデカ箱まで添えた大盤振る舞い。ちゃぶ台の上に瓶がドーン、箱がドーン。そりゃあもう大喜びですよあたしゃ。



一方、父にはこれを子どもに買い与えておけば…というオトナの事情もあったろうと今は思う。

当時、われら子どもがだいすきな飲み物といえば「渡辺のジュースの素」で作るジュースだ。コップに袋からスプーンで粉末をすくってコップに入れる。そこへ水を注ぐと、あ~らオレンジ色に変身。ホワホワと香りまでもただよってくるというあま~い魅惑のお飲み物。

だが、これはあっというまに消費してなくなる。なにせ粉末が少量だと味が薄いからたっぷり入れ、たっぷり入れればすぐになくなるというお財布にきびしい親泣かせの高級おやつ。親御さんとしては、なんともはや切ない窮状であったろう。

と、そこへ、くだんの炭酸飲み物作りの話が舞い込んできたわけさ。初期投資の一瓶と一箱を買い与えておけば、たいそう長くご機嫌でしかもおやつ代が助かるという秘策。

ええ、みごとその甘い秘策に踊らされましたとも。

日々、瓶をかかえ、箱をかかえ、「どうやったら、一番おいしい炭酸の飲み物ができるか」の研究に没頭したのです。クエン酸も重曹も、多すぎても少なすぎても苦味がましたり、薄味だったりして「これだ!」という味に達しないのです。そこが難しい。

何度も何度もくり返していくうち、ふと、どうもどうやら、どうさじ加減しても「これはこの薄甘いシュワシュワぢからの弱い味にしかならないのではないか」という疑問が生じてくるのである。


おりしも、ちまたでは「三矢サイダー」とか「ファンタ」といった炭酸のよ~く効いた新しい飲み物が出回るようになり、うちでも買って飲む習慣がスタート。

「こんなにキューッと喉にくるのが本物の炭酸水というものか」「なんだ、私にはけっして作れないものなんだ」と落胆し悟り、研究意欲は泡と消えていった。

【ちかごろの炭酸飲み物】

時は流れ、再び炭酸の飲み物作りをする日がやってきた。といっても、私ではなく、相方のユクトさんが。

ユクトさんはこのところ、トロンボーンの練習に余念が無い。消音装置をつけつつ練習部屋にこもってプーハープーハーやっている。


だが、終わってのち部屋からでてきたときの姿たるや。機織り部屋から出てきた『夕鶴』のおつうもかくやの、消耗甚だしい抜け殻姿。


目はうつろ、ほおはこけ、「は~、は~」とかすれた息からするに酸欠状態であろう。なにぶん新米トロンボマンだしお年頃でもあるから、練習はたのしくともお身体には堪えているにちがいない。

こんなとき、すばやく元気を補給するものといえば、リポビタンDか、ドラッグか。どちらも効果のほどはしらんけど。

そこで、ユクトさんが考えたのは、砂糖とクエン酸と炭酸水のお飲み物。

本人曰く「無糖の炭酸水は美味しいけど、疲れたときには甘みがない分元気がでない気がする。かといって、市販の糖分入り炭酸はお高いし甘過ぎだし。それなら自分で砂糖入り炭酸水を作ったらどうだろう」。

作り方はいたって簡単。材料をスケールにのせて調合。ペットボトルに入れ、冷蔵庫でよ~く冷やすだけ。


  お味はというと、なんか微妙。CCレモンほどおいしくはないが、それなりの甘ずっぱいシュワシュワ水の味がする。冷やして飲んだらそれなりにイケるかも、ってあたりか。

まあなんつったってお安い。クエン酸は一瓶1000円程度、2リットル炭酸水=98円、あと砂糖だし。コップ一杯せいぜい…円ほどですもん。

さてさて、トロンボーンの練習を終えた相方は、冷蔵庫に直行。作り置きしたくだんのクエン酸+砂糖+炭酸水のボトルを取り出し、ごくごく飲み、「あ゛~~~」と一声、感嘆の意を漏らして放心顔。


「それって効くの?」と聞いてみたところ、「うーーーん。(しばしの間)でも、けっこうおいしいよ」と。 まあ、なんであれ、なにかしら飲まずにはおれんのでしょうな。

ともあれ、なんちゃってお元気ドリンクなと飲んで、どうぞ末永くおたのしみごとをお続けなされまし。

あ、それからドリンクはゆっくりお飲みくだされ。誤嚥性ナントヤラで息と人生が止まるかもですから。

【おまけ】

炭酸水って、「二酸化炭素と水」でできているのだと、後年『もしも原子が見えたなら』という授業(科学をたのしむ「仮説実験授業」の一つ)を受けて知る。原子・分子の世界を想像すると、ゲップもなにやらいとおしいかも。


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2021年2月13日土曜日

繕いもの今昔

縫いました、コースター。

いや、そうではなくてですね。

うちではいてるズボンの膝に穴があいたもんだから、その穴補修用にこしらえたのであります。


布はたまたま、生地を丸く切って使わぬまま残っていたのを使用。丈夫にすべく裏に接着芯を貼り、円周部分が落ち着くようミシンの刺繍モードで補強をしたというわけでして。


無事膝当てできあがり。なんかうれしい。

当てた布が小さくて痛んだところが覆い切れないかもだけど、ま、いいやね。残り物の生地使えたし。ズボンをボツにするときはコースターにすればいいんだし。
これはいてゴミだしOK、コンビニも行けるかも?(膝当ての有無より、このジャージズボンが問題ではあるが。)

それにしても、今頃のミシンて家庭用の直線縫い中心の機種でも、こんなちょっとした刺繍なんて芸当もできるんですなあと感心。


じつはこのミシン、先日買い換えたばかりで、初ソーイングがこの繕い物でした。刺繍なんてめんどくさそうだから興味ないやと思ってたけど、ボタンをピッでたやすく可愛くできてしまうとは。いやん、刺繍病にかかっちゃったかもだわ。

ときに遠い昔。ズボンの膝に穴があくと母が繕ってくれたことがありましたっけ。当時の写真がこちら。小1くらい?

膝には雪だるまらしき絵柄のパッチワークなんだが、白い生地がなかったのかピンク色。ついでに後ろにもピンクが。よく滑り台ごっこするからね、わたし。
とはいえ、茶色のズボンの尻にピンクの当て布ってどうなんすかね。母は「めんこいべ~(可愛いでしょ)」とたいそう悦に入ってる風だったが、わが身は穏やかならず。どうみてもサルじゃん。ま、サルのごとくふっとんですべって遊んでましたけどさ。
友だちと一緒のたのしい写真撮影でさえも、ついつい尻方面を手で隠してしまうわけですよ。

そんなある日、母と一緒に隣町へおでかけすることになった。母は外出着に着替えていたので、私も着替えようと思ったのだが迷った末、いつものお猿ズボンのまま出発。
出先で、はたとその姿に気がついた母に「なんで着替えなかったの?」と詰め寄られてもこたえられなかった。
だって、せっかく縫ってもらったお猿ズボンを脱ぐのは申しわけない気がしたんだもの。お猿ズボンだってお出かけしたいかもじゃん。お猿ズボンが哀れである。
うむ、そんな「ちびともこ」時代の切ない気持ちを思い出しますなあ。

それにくらべてあーた、今頃のミシン生活はいいもんですのお。ささっと刺繍つきで繕いものが可愛くできちゃうんだもの。あ、でもお子さまには、こんな細かい刺繍ものより、乗り物とかキャラクターのワッペンのほうがうれしいかもしれんです。

たとえばこれ。ミシンなしで、買って縫い付けただけの上着。アイスの汁をこぼした痕跡インペイが高じてワッペン貼りまくり。1個だけ貼ったんじゃいかにもこぼした感がありありだったもんでね。おかげさまで、お子さま方に「かわいいっ!」ってなでてもらえる服になりました。

ただし、材料費は服より高価。お財布は北風ピープーでござんした。

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